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【感想・書評】「メモの魔力」は、なぜメモの力ではなくメモの魔力なのか

メモの魔力 前田裕二

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視力検査の時にかけるレンズが複数枚入った重たいメガネ。度が強すぎるとはっきり見えるけれど疲れてしまう。

メモの魔力を使いこなせていない私はまだそんな感覚がある。

SHOWROOM社長の前田裕二さんが書いた「メモの魔力 -The Magic of Memos-」という本は、売れに売れているので発売前からその存在は知っていた。

「メモの魔力」は本屋やネットニュースやTwitterやYouTubeのサムネイルでどうしたって目に入ってくる。

面白そうな本だなと思っていたけれど、決定的に購買に至るタイミングがないまま半年以上が経過していた。

しかし、他のビジネス書・自己啓発本を読んでいてとにかく「ビジョンを書き出すことが大事」「まずはメモを取ること」と書いてあって、そうかやっぱり何はともあれメモが大事なのかと思い、途端に「メモの魔力」が読みたくなってすぐに書店へ向かった。

そして「メモの魔力」を読んだらものすごくノートが欲しくなったので、翌日無印良品で90円のノートを二冊購入。

といった出来事が、つい一週間前のことだ。

この一週間で自分を取り巻く様々なことが動き出し、メモの魔力に取り憑かれ、その威力に驚き、そして飲み込まれそうになった。

メモの魔力は初心者が誤って使うと途端に生活のバランスを崩すかもしれないほどの力を持ったものだ。

グリーンスムージーのように体に取り入れればたちまちスッキリ元気になる、というよりは適量なら体にいいけれど気持ちが良いからとがぶがぶ飲んでいると酔いつぶれてしまうワインのようなもの。

「メモの力」ではなく「メモの魔力」。パワーではなくマジックなのだ。

書店員時代、山積みされているメガヒット本を見てなぜこの本がそんなに売れるのか、と思ってしまう瞬間が度々あった。

けれど、「メモの魔力」は実際売れているけれど、売れるべきだし、売れてメモの魔力が広まれば確実に日本が、世界が良くなっていくだろうと思える本だった。

前田さんの熱いエピソードと文体が素晴らしかったので、ほんとうに久しぶりに寝る間を惜しんで本を読んだ。

「メモの魔力」が多くの人に届けばいいなという想いを込めて、メモの魔力を実践してみて私の身に起きたこと、感想・レビューを書いていきます。

白いノートに向かっているだけで言葉が溢れてくる

やりたいと思ったことは素直に即実行するので、「メモの魔力」に書いてあるメモ方法をとりあえず真似してみた。

生活をしていて思ったことはもちろん、視聴した動画やラジオ、読んだ本や雑誌で気になったことは片っ端からメモをして抽象化・転用の欄を埋めていった。

これまでも日記や手帳はマメに書く方だったし、スマホや小さなメモ帳にメモをする習慣はあったけれど、「メモの魔力」流のメモにするともっともっと、とめどなく言葉が溢れてきた。

例えば

雑誌の芸能人のインタビューで素敵だなぁと思った言葉
「妊娠期間中に18kgも太ってしまったけれど、それすら楽しかった(笑)」をメモ

抽象化「体重を気にしすぎない姿はかっこいい」「ありのままの状態を面白がる力」

転用「自分で完全にはコントロール不可能な数字、例えばブログのPVは気にしすぎないようにする」「どんな状況も面白がることを心がける」

といった感じで、雑誌の片隅の小さな文字からも、大きな学びがあるのです…

妊娠中の体重増加の話がブログ運営の話まで飛躍できる、この飛距離はメモの魔力ならでは。

メモの魔力を使っていなければ、「へー素敵な考えだなぁ」(終わり)だったと思う。良くてどこかにメモして終わり。

メモの魔力の威力、半端ない。

それから、一週間ほどで溜まったメモをパラパラと見返していると無意識に繰り返し使っているワードを発見したりして、これまでは気づけなかった潜在的な自分の想いを知ることができた。

とにかくどんどん「自分の心の底に眠っていた言葉」「学び」が真っ白なノートにたまっていって、その言葉ひとつひとつが私の視界をどんどんクリアにしてくれた。

なぜパワーではなくマジックなのか

ところが、自分をクリアにしてくれる言葉、思想に出会えて万々歳!メモの魔力はなんて素晴らしいんだ!と思う反面、だんだんとしんどくなってしまう感覚が出てきた。

メモの魔力は、使い方次第では自分をマイナスの方向に連れて行ってしまう。

その理由は3つある。

メモの魔力は効果が強すぎて、使いこなす方も力を持っていないと振り回されてしまうから

色々なことに気づきすぎてしまい、これまでは見えていなかったことがウワァァっと台風のごとく押し寄せてくるので、しっかり立っていないと飲み込まれてしまう。

メモの魔力初心者の私は、ぐったりと疲れてしまうほどの衝撃を受けた。

それから、メモの魔力を始めてから脳が回転しすぎる感覚がある。

これまでは「覚えること」に脳の容量を使ってしまっていたのが、メモの魔力を始めてから「メモに書いたから覚える必要なし」と認識して脳の容量がガバッと空いた。

その結果、脳の働きが軽くなったように思うのだけど、あまりにガンガン使っても慣れていないので擦り切れるように消耗してしまう。

よく見える目で過去の傷に向き合うのは、辛い面もあるから

メモの魔力を始めるということは、これまで「1.0の視力」で見ていた世界を「2.0の視力」で見るようになるということ。

今までは見えなかった、見ようとしてこなかったチリやホコリまで見えてしまう。

これまで何の辛い経験もなく、後悔のない人生を歩んでいる人ならよく見えても問題はないのだろうけど、私は過去の自分を見つめ直して、自分自身に対してあの時は我慢させて悪かったね、辛かったね、と同情してしまった。

過去の自分も含めて、大抵の人は過去の嫌だったことを意識的に見ないようにして生きていく。

それはそれで、ひとつの生存戦略だ。

しかしメモの魔力を手にして様々な事象を観察していく、ということは過去の嫌だったことに正面から向き合うということだ。

過去の悲しみに向き合う強さ、覚悟があって初めてメモの魔力は使うことができる。

孤独感が増すから

メモの魔力によって世界の見え方が変わってくると、話や感覚が合わない人が増えてしまう。

自分にとって好きなこと、嫌いなことに敏感になりすぎると、それはそれで選択肢が狭まって生きづらい。

物事を深く考えずに「美味しいねー楽しいねー仕事やだねー」と生きていた時代の自分の時は人付き合いや友達と遊ぶことが比較的多くて、こういう生き方をしている人が日本の大多数なのだと思う。

でも、自分の価値観を追求するような生き方に加えてメモの魔力を伴ってより強固になった意志を持つと、大多数の人と考え方が合わなくなり、孤独になります。

自分が価値観の近そうな人々の輪に入る努力をしたり、もっとレベルアップすれば価値観の合う人に大勢出会えるのだと思うけど、自分が変わる過渡期には「あっ、私、孤独だ」という瞬間が訪れる。

マジックは強大な力がある分、手にした人によって良いものにも、悪いものにもなる。

陽の部分が輝かしいほど、強大な影に立ち向かわなければならない。

だから、この本は「メモの力」ではなく「メモの魔力」なんだなと私は思っている。

メモの魔力という武器を使いこなせる自分になるために

メモの魔力は確かに使う人を選ぶ。そう簡単には乗りこなせない。

でも、だからと言って私はメモの魔力を手放すわけにはいかない。

私には小説を書きたいという目標があるから。

メモの魔力を使いこなせるようになるには、どうすればよいのだろうと考えてみた結果、2つのことを思いついた。

強力な現実肯定力をもつ

曖昧なままではあまり考えなくても生きていけたけれど、メモの魔力を手にした後は色々なものが見えすぎてしまうので、その過矯正感を自分の心で乗り越えていくことが大事だと思った。

強力な、現実に対する肯定力を持つこと。

つらいことに向き合うときも、ネガティブな解釈ではなくポジティブな解釈を心がける。

私はメモの魔力を始めてからだんだんと自分のポジティブ変換力が上がってきたように感じる。

メモの魔力は心の筋トレ。

数年前までは「我慢」という形で心を鍛えたような気になっていたけれど、それは心の筋トレでもなんでもなくて、ただ心の働きを鈍らせるだけ。

使わない筋肉がどんどんハリを失い衰えていくように、心だって使わなければ弱っていく。

強い心とは、多くを知る勇気があり、しなやかで、柔軟で前向きな解釈ができる心のこと。

メモの魔力を使いこなすには、本当の意味で心を強くしていく必要がある。

私はまだまだ修行中!

メモの魔力を意識的にオフする時間を作る

著者の前田さんはメモ歴数十年のメモ界の総本山。

さらっと書かれていることでも、ほんとうにそのまま真似すると熱すぎてヤケドするので、まずは自分にできる範囲でやっていくのがよいと思った。

メモ歴一週間の私には、私なりの階段の登り方がある。

なので、まずはあらゆることをメモしよう!と常に頭を働かせるのではなく、意識的にメモの魔力スイッチを切る時間を作るようにした。

度が強すぎるメガネはずっとかけていられないし、これから時間をかけて自分に合ったレンズの枚数を微調整していく。

細かいところまでじっくり見ようとする自分と、まぁ今は何も考えずにのんびりしようよと遠くで俯瞰している自分。

その二人の自分を同居させることがメモの魔力を使いこなすためにはとても大事だと思う。

これまでとはだいぶ違う生活習慣になって、脳もさぞ驚いていることだろう。

手にした魔法を自分の力にすべく、これから時間をかけてメモの魔力と仲良くなりたい。